茂上工芸
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仏教伝来とともに発達した木の工。
江戸指物には、日本の工芸文化の歴史が脈動している。




●指物って何?


 指物とは、日本伝統の木工和家具のことです。
 指物という名称は、木の板を、鉄の釘を使わずに指し合わせるからだとも、物差しを駆使して精巧に組 み合わせていくからだ、とも言われています。薄い板を組み合わせた造りは華奢に見えますが、隠れた 部分に「ほぞ」と呼ばれる凹凸を作って精巧に組み合わせているので、実は非常に堅牢です。
 指物は、大きくは『京指物』と『江戸指物』に分けることができます




●江戸指物


 王朝文化や茶道とともに発達した『京指物』は、雅で華麗な装飾を好みますが、対して『江戸指物』は、武家や商人、歌舞伎役者に愛用されてきた生活調度品であり、「江戸前」と称される、木目や色合いなど木本来の良さを生かしたシンプルで粋な仕上がりを身上としています。
 金物も、取手部分など最小限度しか使いません。生漆の塗りと拭きを何度も繰り返す「拭きうるし仕上げ」という独特の塗装を施すのも、そのためです。 分業ではなく、一人の職人が手作業で最後まで責任を持って完成させるのも、『江戸指物』の特徴です。
 現在、『江戸指物』は、「伝産法」という国の「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」によって『伝統的工芸品』に指定されています。指定には厳しい手続きがあります。『茂上工芸』も「伝産法」の指定基準に則り、材料は国産木のみを使用し、技法工程もすべて法律で決められた条件を守って製作しています。
 安価な輸入木に頼らず、固く伝統を守り続ける『江戸指物』は、今では希少価値といえるかもしれません。

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「拭きうるし仕上げ」を施した『江戸指物』